PFC-FD療法

PFC-FD療法

 体外受精において、凍結融解胚移植が主に施行されるようになってきていますが、子宮内膜が十分な厚さにならず、凍結融解胚移植がキャンセルになってしまう方や、それが原因で受精卵が着床できずに妊娠されない方がいます。このような子宮因子による難治性不妊症に対しては国内では認められていない代理出産などの治療法に頼る以外有効な治療法がありませんでした。そこで注目されたのがPRP(Plate Rich Plasma:多血小板血漿)療法です。


再生医療のひとつであるPRP療法は、血小板の中にある細胞の成長を促す物質や免疫に関わる成長因子を利用し、局部へ注入することで変形性膝関節症やスポーツ外傷などの損傷した組織修復や皮膚、毛髪の再生を促進する治療として整形外科、歯科、美容外科領域で用いられてきました。

近年このPRP療法が不妊治療に応用され、従来の様々な薬剤を使用してもなかなか厚くならなかった子宮内膜を十分な厚さにし、受精卵を着床しやすくすることを目指す療法が既に実施されています。子宮内膜が7ミリより増加しない難治性不妊症患者36例を対象とした多施設による自己対照比較試験では、エストロゲン補充周期の10日目と12日目にPRPを子宮内投与した結果、14日目の内膜厚は7.25ミリで、投与前より1.27ミリ増加し有意な内膜肥厚を認め、6例は妊娠反応陽性、そのうち5例は胎嚢を確認できたとの報告もあります。(産婦の実際 第69巻10号)

しかし、このPRP療法は「再生医療法等安全性確保法」に基づき、厚生労働省への認可申請手続きを行う必要があります。この手続きが非常に煩雑なため、手続き代行を行う業者が存在するのですが、本来の治療費以外に許可申請に多額の費用が必要になってしまうこと、また許可申請手続き自体にも長期の時間を要してしまうことなどの難点がありました。

そこで今回、当院ではPRP療法と同等の効果が期待できるPFC-FD(Platelet-derived Factor Concentrate Freeze Dry:血小板由来因子濃縮物フリーズドライ)療法を導入することとなりました。PFC-FD療法とは、患者様ご自身から採血した血液をセルソース株式会社再生医療センター(特定細胞加工物製造許可施設、厚生労働省認可)へ輸送し、血小板由来因子のみを抽出・濃縮してフリーズドライ化した後にクリニックに返送され使用できるようになっています。血小板そのものを注入するPRP療法とは異なり、細胞成分を除去するため複雑な許可申請手続きが不要となりました。

方法としては、患者様から静脈血を49ミリリットル採取し、外注先であるセルソース株式会社に製造を委託します。約3週間後、フリーズドライ化されたPFC-FDが届きます。PFC-FDは6ヶ月間保管が可能です。このPFC-FDを蒸留滅菌水1ミリリットルで溶解し、人工授精用カテーテルにて子宮内に注入します。注入のスケジュールは凍結融解胚移植を予定している周期の10日目、12日目の2回子宮腔内は注入します。子宮内膜が十分に厚くなったことを確認し、胚移植を行います。

全ての検体において、PFC-FDの製造前に採取された血液の一部を使用し、下記感染症の検査を実施します。

  1. 1.HBs抗原定性:B型肝炎ウイルスに関する検査
  2. 2.HIV抗原・抗体:HIVウイルスに関する検査
  3. 3.RPR法定性:梅毒の感染に関する検査
  4. 4.HTLV-1抗体半定量:ヒトT細胞白血球ウイルスに関する検査
  5. 5.高感度HCVコア蛋白:C型肝炎ウイルスに関する検査

これらのうち1項目でも陽性と判定された場合は製造ができません。その際は検査料のみご負担いただきます。

また、この治療法が禁忌になる場合もありますので、担当医にお尋ねください。

 

費用

PFC-FD作成 血液検査(感染症検査)含む 165,000円注4)

PFC-FD子宮内注入(1回)11,000円

※PFC-FDは、全額自費となります。

 

注4)感染症検査陽性の場合、PFC-FD作成はできませんが、検査費用はご請求させていただきます。
また、採血後やPFC-FDの作製後に、治療の同意を撤回された場合などにおいても、発生した費用については
ご負担いただきますのでご了承ください。

 

PFC-FD療法のメリットとデメリット

長所(メリット)

・PFC‐FDの準備

自分の血液から抽出するため、免疫抑制剤を使用しなくて良い

・PFC‐FD作成まで

一回の採血でPFC-FDが作製できる

・PEC‐FD実施

子宮内膜が厚くなる(子宮内膜が薄く、融解胚移植ができなくなることを回避)

受精卵が着床しやすい

 

短所(デメリット)

・PFC‐FDの準備

採血の苦痛やアフタートラブル(皮下出血、気分不快など)

・PFC‐FD作成まで

何らかの理由で、PFC-FDが作製できず、治療ができない場合がある

・PEC‐FD実施

子宮内注入時のトラブル(出血、疼痛、注入器具による子宮の損傷など)

 

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