正常な月経時の出血量はどれくらい?経血量による体調の変化や病気のサインについて解説
月経時に経血の量が増えたり減ったりすることは、身体の不調や病気のサインである可能性があり、いずれの場合も原因を明確にして適切に治療するために早めに婦人科を受診することが重要です。
では、経血量と女性の身体はどのように関係しているのでしょうか。
この記事では、月経時の経血量による体調の変化や罹患している可能性がある疾患について紹介します。
経血の量が多い・少ないことで不安を感じている人や、月経不順を起こしやすい人はぜひ参考にしてください。
正常な月経時の出血量は?
月経時の経血の量には個人差がありますが、健康な女性の月経1回あたりの出血量の基準は20〜140mlで、平均の月経日数は4.6日だとされています。
初潮を迎えて間もない思春期ではホルモンバランスや卵巣の働きが乱れやすいため、月経不順が起こりやすく血液の出る量が不安定になりやすいです。
そのため、この年代の女性であれば多少の月経周期の乱れや経血量の変化はつきものです。
また一般的に経血の量は、どの年代の女性でも体調やホルモンの分泌状態によって変動するものであるため、正常な数値内であれば基本的には問題ありません。
しかし、1回の月経を通して血液量が20mlより少ない、または140mlより多い場合は子宮や甲状腺に異常があるおそれがあるため、念のため婦人科を受診しましょう。
経血が多い・少ないとどうなる?
経血の量には個人差がありますが、極端に多い場合、少ない場合は身体にどのような影響があるのでしょうか。
ここからは、経血が多い場合、少ない場合の注意点について紹介します。
経血が多い場合
1回の生理で排出される経血の量が140ml以上と多い状態を過多月経と呼び、以下のような症状があらわれる場合があります。
- めまい
- 立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 疲れやすい
- 倦怠感
- 頭痛・頭が重い
経血の量が多いと貧血になりやすいほか、頻繁にナプキンを取り換える手間がかかったり衣類を汚す不安やストレスを感じたりします。
また過多月経には器質性や機能性の疾患が隠れているケースもあるため、ナプキンが1時間ももたずにもれてしまう、多量の出血が8日以上続くなどのケースでは念のため婦人科を受診しましょう。
経血が少ない場合
経血が少ないことで直接身体に影響を及ぼすことはありませんが、過少月経の原因となる要因が不妊症を引き起こす可能性があります。
1回の月経での経血の量が20ml以下である場合過少月経が疑われますが、ナプキンを換える手間や汚れたショーツを洗う手間が掛からないため、楽だと感じてそのままにする人もいます。
しかし過少月経には、エストロゲンの分泌低下や子宮内膜症などの異変が隠れているケースがあり、妊娠を希望する患者さんの場合はとくに放置は避けるべきです。
ただし、経血の量だけでは排卵の有無やホルモンの分泌状況は把握しにくいため、いざという時にスムーズに受診できるよう、基礎体温を記録する習慣をつけるのがおすすめです。
経血量が不安定になる原因
経血の量は極端に多くても少なくても適切とはいえず、体内の異常を知らせるサインであったり生活習慣が乱れていることが原因であったりする可能性があります。
ここからは、経血の量が不安定になる原因について紹介します。
経血量が多い原因
経血量が多い過多月経になる原因には以下のものが挙げられます。
婦人科器質性疾患
婦人科器質性疾患には良性のものと悪性のものの両方が存在しますが、いずれも経血の量が多くなる過多月経を引き起こす原因となり、子宮の病気であるケースが多いです。
過多月経の原因になる可能性がある婦人科器質性疾患には以下のものがあります。
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮内膜症
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
過多月経が重症のケースでは、一般的に良性とされている腫瘍やポリープでも悪性化する可能性があることも考慮し手術を行う場合があります。
婦人科器質性疾患のなかには症状がなく発見が遅れる病気もありますが、経血量の増加や強い月経痛がみられる場合は要注意です。
また婦人科器質性疾患では、レバーのような血の塊が排出される場合があります。
経血のなかにたまに血の塊が混ざっている程度であれば基本的には心配いりませんが、ナプキン交換のたびに血の塊がみられたり、500円玉より大きな血の塊がみられた場合は婦人科に相談しましょう。
婦人科機能性疾患
婦人科機能性疾患では、女性ホルモンの分泌異常によって過多月経を引き起こすケースがあり、月経開始からの期間が浅い思春期の年代と閉経期の近い年代に多くみられます。
過多月経の原因になる可能性がある婦人科器質性疾患の例は以下の通りです。
- 黄体機能不全
- 無排卵性周期症
黄体機能不全は、黄体から分泌されるホルモンが不足し子宮内膜の反応が鈍くなることで引き起こされます。
黄体から分泌されるホルモンには受精卵の着床を手助けする働きがありますが、黄体機能不全がみられる女性では、子宮内膜を安定させ着床を促す黄体期が短くなるため、過多月経や不正出血をともないます。
また黄体機能不全は月経不順だけではなく、不妊や流産を繰り返す危険性も高いです。
内科的疾患
内科的疾患では、血液内科などの疾患によって引き起こされる血液の凝固・止血機能の異常が過多月経の原因となる場合があります。
過多月経の原因になる可能性がある内科的疾患の例は以下の通りです。
- 突発性血小板減少性紫斑病(ITP)
- フォン・ヴィレブランド病
- 血友病
- 白血病
血液内科の疾患では、先天的なものや後天的なもの、薬の作用が原因で血液の凝固因子に異常があるケースがあります。
またウイルス性肝炎や飲酒が原因で肝機能が著しく低下している場合も同様に、血小板の減少により過多月経を引き起こす可能性があります。
血液疾患を放置すると、医療機関で出血をともなう処置を行った際に大量出血のリスクが懸念されるため、病気の早期発見と治療が必要です。
経血量が少ない原因
経血量が少ない過少月経になる原因には以下のものが挙げられます。
不健康な生活習慣
心身ともに不健康な生活を送っていると、過少月経の原因となる場合があります。
睡眠不足や食生活の乱れ、ストレスはエストロゲンの正常な分泌を妨げ、過少月経や排卵障害を引き起こす可能性があります。
また過度なダイエットは、経血の量が少なくなるほか、月経が止まったり頻度が少なくなったりする要因の代表的な例です。
子宮・卵巣・甲状腺の病気
以下のように、子宮・卵巣・甲状腺の病気が原因で過少月経を引き起こす場合があります。
- 卵巣機能不全
- 黄体機能不全
- 多嚢胞性卵巣症候群
- バセドウ病
- 橋本病
子宮や卵巣の病気は、月経の期間が短くなり経血量が少なくなるだけではなく、月経が長引く過長月経の原因にもなります。
また甲状腺ホルモンは卵胞の成熟や正常な黄体機能に欠かせないため、病気でこれらに異常が起こると過少月経やその他の月経不順を招く可能性があります。
ピルの服用
月経不順や月経痛の治療のためにピルを服用していると、過少月経になる可能性があります。
このケースでは、経血の減少はピルの副作用によるものなので心配いりません。
しかし、ピルの服用をやめてから3ヶ月ほど経過したにも関わらず月経が再開しない場合は、妊娠やなんらかの疾患が原因であると考えられます。
ピルを服用しているあいだと服用後の副作用や体調の変化については、婦人科で事前に詳しく聞いておくのがおすすめです。
経血が多い時の受診の目安
過多月経が疑われる場合の受診の目安は以下の通りです。
- レバー状の塊が頻繁に出る
- 500円玉サイズ以上の血の塊がみられる
- ナプキンやタンポンの交換が1時間ごとでは足りない
- 夜用のナプキンを使用しても朝までもたず経血が漏れてしまう
- 昼間でも夜用のナプキンが必要
- 出血の多い日が8日以上継続してある
- めまいや立ちくらみ、ふらつきがある
- 体力がなく、身体がだるいと感じることが多い
- 頭が重く、頭痛になりやすい
経血の量や体調には個人差がありますが、経血の量が明らかに多かったり体調が悪いことが多い場合は婦人科の受診が推奨されます。
これらに当てはまる症状は日常生活に支障をきたすほか、ストレスを感じやすい月経時のメンタルの天敵です。
月経の途中でも婦人科の受診は基本的に可能なため、我慢せず早めに相談しましょう。
月経不順を予防するためには?
月経不順は、以下の方法で症状の予防・改善に効果が期待できます。
ストレスをためない
ストレスの蓄積はホルモンバランスや自律神経の乱れにつながり、月経不順を引き起こすおそれがあるため、ストレスを適度に発散して溜めない生活を心がけましょう。
ストレスの少ない生活を続けているうちに、月経不順が改善される可能性があります。
ストレスがゼロの生活を送るのはむずかしいですが、リラックスグッズを使用してくつろぐ時間を確保したり、気分が安らぐ趣味を見つけたりするなど、自分なりにストレスを少しでも減らせる方法を模索してみましょう。
食生活を改善する
食生活が偏っていると月経不順の原因になる可能性があるため、バランスの良い食事を心掛けましょう。
女性ホルモンの働きを整えるためには、動物性タンパク質とビタミンB群・E群を豊富に含む食材を適度に取り入れるのがおすすめです。
また亜鉛を含む小魚やごま、エストロゲンの不足を補う大豆製品にも月経不順の改善が期待できます。
冷え対策をする
身体の冷えは過多月経につながるケースがあるため、薄着になるのは控え、冷たい飲食物の摂りすぎに注意するなど、冷え対策をしっかり行うことが重要です。
とくに月経時は身体の下部から冷えが侵入してきやすいため、下半身はとくに暖かくして過ごしましょう。
しかしエステやマッサージは血行がよくなりすぎることで経血量の増加につながる可能性があるため、月経の症状が著しい場合は避けるのが無難です。
まとめ
今回は、経血の量が不安定になる原因や月経不順を予防する方法について紹介しました。
過多月経や過少月経には病気が潜んでいるケースがあるため、放置せず早めの受診が推奨されます。
また月経不順はストレスの蓄積を避けたり生活習慣を見直したりすることで予防・改善に効果が期待できるため、QOLを意識して充実した生活を送るようにしましょう。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、月経異常や子宮内膜症の治療を患者さんと相談しながらより良い方法で行います。
経血の量についてお悩みのかたや、月経不順の原因について知りたいかたはぜひ一度お気軽にご相談ください。
#月経 #生理 #経血量
最近の投稿
最近のコメント
アーカイブ
カテゴリー
- カテゴリーなし