不妊治療前に行う検査とは?男女別の項目などを解説
不妊治療を始める前には、必ず不妊検査が行われます。
不妊治療と不妊検査を同じものと思っている人もいるかもしれませんが、不妊検査は不妊治療を始めるための準備段階です。
男女によって受ける検査内容が異なるため、不妊検査を受ける前にどのような検査があるのか、特に女性はどういったタイミングで検査を受けるのか知っておきましょう。
この記事では不妊治療前に行う検査とは何か、男女別の検査項目などを解説します。
不妊治療を始めたいと思っている人、不妊検査項目について詳しく知りたい人はぜひ最後までご覧ください。
不妊検査とは?
不妊検査とは、妊娠しにくい原因がないかを調べるために実施する検査です。
女性と男性それぞれに検査項目があり、不妊検査の結果によっては不妊治療前に不妊原因の治療をおこなう場合もあります。
男女ともに排卵や卵管、精子の数など基本的な生殖機能に問題がなければ、女性の排卵日に併せて性行為を行うタイミング法から始める場合が多いです。
一方で、基本的な生殖機能に問題が見つかれば、タイミング法ではなく人工受精や体外授精などから治療を始めることもあります。
不妊検査を受ける対象
子どもを望む場合に、不妊検査を受けた方がよいとされている対象は以下のとおりです。
① | 女性が35歳未満で避妊をしない性行為を行っても12ヶ月以上妊娠しない |
② | 女性が35~40歳で避妊をしない性行為を行っても6ヶ月以上妊娠しない |
③ | 女性側が以下の避妊に関するリスク因子を有している(早期検査が必要) ・40歳以上 ・月経周期が異常 ・子宮疾患を患った経験がある ・重度の子宮内膜症 ・卵巣の手術経験あり など |
男性側が以下の避妊に関するリスク因子を有している(早期検査が必要) ・精巣の手術経験あり ・性機能障害 ・ほかのパートナーとの不妊歴がある など |
妊娠は女性の年齢が40歳を過ぎたころから成功率が一気に下がり、男女ともに年齢が上がると共に卵子と精子の質が低下します。
不妊検査や治療をしてもすぐに妊娠できるとは限らないため、できるだけ成功率が高くなるように早めに始めるようにしましょう。
女性が受ける不妊検査
まずは、女性が受ける不妊検査を8項目紹介します。
ここで紹介する検査項目全てを行うわけではなく、問診などによって検査項目は多少変化します。
また、女性の不妊検査は排卵直前や月経後など月経周期に併せて行う検査も多いため、すべての検査が完了するまでに1〜2ヶ月程度かかる場合も多いです。
ホルモン検査
妊娠をするためには、さまざまな女性ホルモンが関係しているため、ホルモンの分泌量を調べることで子宮や卵巣の機能不全や排卵障害などの可能性を探ります。
ホルモン検査を実施する時期と詳細な検査内容は以下のとおりです。
月経開始2~4日 (基準値) | 排卵後にできる黄体機能を知る目安となる黄体ホルモン |
卵巣に卵子を成熟させるように伝える卵巣刺激ホルモン | |
数値が高ければ排卵や着床に影響があるプロラクチンと乳汁分泌ホルモン | |
卵胞の成熟度を示す卵胞ホルモン | |
排卵直前 | 排卵時期を確認する黄体形成ホルモン |
卵胞の成熟具合を確認する卵胞ホルモン | |
排卵後5~7日 | 子宮内膜を厚くするように指示をだす卵胞ホルモン |
子宮内膜を厚くし、着床に備えるプロゲステロン |
ホルモン量は月経周期によって変動するため、月経周期に併せて3回採血を行いホルモン値を計測します。
AMH検査
AMH検査とは、月経周期に関係なく受けられ、卵巣に残っている卵子の数を計る検査で、採血による測定を行います。
女性が生涯のうち、排卵できる数には限りがあり、年齢と共に減少するだけで増えることはありません。
AMH値が高過ぎると多嚢胞性卵巣症候群、低過ぎると早発閉経の可能性があります。
フーナー検査
フーナー検査とは、排卵期に性行為を行って女性の頸管粘液と男性の精子との適合性を調べる検査です。
相性テストと呼ばれる場合もあり、精子の数が少なかったり運動率の低い精子が多かったりした場合は免疫異常の可能性があります。
フーナー検査は、頸管粘液の分泌が多い排卵直後にパートナーと性行為を行い、12時間以内に頸管粘液中に存在する精子の様子を確認します。
理想は、検査当日の朝に性行為を行うことですが、難しい場合は検査前日の遅めの時間に性行為を行い12時間以内に検査を受けるようにしましょう。
男女ともに生殖機能に問題がなかったとしても、フーナー検査の結果が悪く出ることがあります。
その場合は次月の排卵期に再度検査を行い、再度結果が悪い場合や明らかな不妊原因が分からない場合は、採血で抗精子抗体検査を実施することがあります。
超音波検査
超音波検査は、子宮や卵巣の状態を確認するための基本的な検査です。
膣内に超音波を発生させるプロープを入れて、反響する信号を画像化する方法や下腹部の表面から超音波を当てる方法などで子宮や卵巣の様子を観察します。
超音波検査ではおもに以下の内容を確認します。
- 子宮や卵巣の異常の有無
- 卵胞の数や大きさ(排卵日の予測も可能)
- 子宮内膜の厚さ
- 子宮筋腫の有無 など
超音波検査は痛みもなく、排卵日をかなり正確に予想することもできます。
クラミジア抗体検査
クラミジア抗体検査では、血液からクラミジア抗体の有無を確認する検査です。
クラミジアとは、性感染症の一種であり、感染することで子宮や卵管に炎症や癒着を引き起こし不妊の原因になる可能性があります。
クラミジアは日本で最も感染報告の多い感染症で、自覚症状がない場合もあるため不妊治療を始める前に検査を行い、陽性の場合はまずクラミジアの治療から始めます。
子宮卵管造影法
子宮卵管造影法は、子宮内にレントゲンに反応する液体である造影剤を注入して、レントゲン透視や写真で確認する検査です。
月経終了から排卵前に検査を行い、子宮の形や卵管の太さ、癒着の有無などを調べます。
個人差はありますが、5〜6分程度の検査で痛みも少ない場合が多いです。
また、子宮卵管造影法は受けるだけで、妊娠率が上がる検査ともいわれています。
卵管に造影剤を注入した際に軽度の卵管詰まりが解消したり卵管内部の滑りが良くなったりするためです。
子宮鏡検査
子宮鏡検査は上記の子宮卵管造影法にて異常があった場合、さらに症状などを確認するために実施される検査です。
卵胞気に子宮に内視鏡を入れて子宮や卵管などにトラブルがないかを調べます。
ポリープや筋腫などが見つかった場合は切除することも可能で、慢性子宮内膜炎などの診断でも子宮鏡検査が行われます。
子宮内にポリープや粘膜下筋腫などがあると妊娠率が低下し、大きな粘膜下筋腫は流産率の上昇につながる可能性が高いです。
頸管粘液検査
頸管粘液検査は、排卵期に子宮頸管粘液の牽糸性・量・色・pH・羊歯状結晶などをチェックする検査です。
頸管粘液はおりものとも呼ばれており、精子の通過を助け、妊娠しやすい状態にしてくれます。
排卵直前でも頸管粘液の量が少なく、粘り気が低い場合は自然妊娠の可能性が低くなります。
そのため、不妊治療を始める際にはタイミング法ではなく人工授精から始める場合が多いです。
男性が受ける不妊検査
次に、男性が受ける不妊検査を2項目紹介します。
男性の場合は、1回の来院ですべての検査が終了する場合が多いです。
精液検査
精液検査では、2〜7日の禁欲期間を経たあとに、マスターベーションで精液の全量を採取します。
精液は病院で採取するのがおすすめで、産婦人科には男性が精液を採取する用の部屋が用意されている場合が多いです。
以下の表が精液検査の検査項目と基準値です。
検査項目 | 下限基準値 |
精液量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 1500万/ml以上 |
総精子数 | 3900万/射精以上 |
前進運動率 | 32%以上 |
総運動率 | 40%以上 |
正常精子形態率 | 4%以上 |
白血球数 | 100万/ml未満 |
精液は日によって状態が変化するため一度悪い結果が出ても、再度検査をすれば問題ない場合もあります。
泌尿器科的検査
泌尿器科的検査は、精巣などの外陰部の診察や精巣サイズの測定、男性不妊症の原因として頻度の高い精索静脈瘤の有無を触診で検査します。
精索静脈瘤は、精液所見の悪化や精子のDNA損傷による受精の失敗や流産の原因、男性ホルモンの低下などを引き起こします。
適切な治療を行えば改善する可能性が高いため、精索静脈瘤が見つかった場合は、不妊治療の前に治療を行う場合が多いです。
同時に採血を行い内分泌検査として血中の男性ホルモンや性腺刺激ホルモンなどの量を調べます。
不妊検査は男女一緒に受けるのがおすすめ
不妊治療は不妊検査から始まります。
不妊の原因は女性だけではなく男性にも問題があることも多く、不妊検査を保険適用で行うためには2人揃って検査を受ける必要があります。
女性だけが不妊検査を行い不妊治療をしても、不妊の原因が男性側にあった場合は不妊治療が成功しない可能性が高いです。
まずは2人で問診や検査を行い、お互いの身体の状態を知ったうえで二人三脚で不妊治療を進めて行きましょう。
まとめ
不妊検査とは、妊娠しにくい原因がないかを調べるために実施する検査であり、不妊治療を始める第一歩です。
不妊検査の結果で、基本的な生殖機能に問題がなければ女性の排卵日に併せて性行為を行うタイミング法から始める場合が多いです。
一方で、どちらかに基本的な生殖機能に問題があった場合、タイミング法からではなく人工受精や体外授精から治療を始めることもあります。
見つかった結果によっては不妊治療を始める前に治療を済ませてから進めることもあるため、必ず2人揃って検査を受けるようにしましょう。
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