卵子凍結はなぜ必要?4つの理由やデメリットについても解説

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卵子を凍結保存することで将来の妊娠に備えられる卵子凍結ですが、なぜするのかその必要性がわからないという方も少なくないでしょう。

卵子凍結を行う理由として、加齢による卵子の数の減少や老化、病気による不妊のリスクなどが挙げられます。

この記事では、卵子凍結をする理由について詳しく解説します。

卵子凍結の流れやおすすめの方、デメリットなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

卵子凍結とは

卵子凍結をイメージさせる産科・婦人科の処置室の画像

卵子凍結とは、受精前の卵子を採取して凍結保存することです。

卵子を凍結保存しておくことで、将来の妊娠・出産のための備えをしておくことができます。

卵子凍結を行う目的は2つ

卵子凍結には『医学的適応』『社会的適応』の2つがあります。

医学的適応は悪性腫瘍などの治療によって卵巣機能の低下が予想される場合に行うもので、社会的適応は加齢などによる妊娠率の低下に備えて行うものです。

卵巣機能が高い若い年齢で卵子凍結を行うことにより、将来卵巣機能が低下したときにも採取時の若い卵子を使用して妊娠を目指せます。

卵子凍結による妊娠率

卵子凍結の妊娠率は、卵子採取時の年齢によって異なります。

35歳までに卵子凍結を行った場合40歳を含む年代で卵子凍結を行った場合
凍結融解後の未受精卵子の生存率90~97%68.6~89.7%
凍結融解後の未受精卵子の受精率71~79%71.7~85.8%
凍結融解後の未受精卵子の妊娠率36~61%3.3~10.8%

上記のデータから、40歳を含む年代で卵子凍結を行った場合の方が妊娠率が大きく低下することがわかります。

これは加齢による卵子の老化が影響していると考えられます。

卵子凍結をするならなるべく若い年齢、できるなら35歳までに決断するのが望ましいといえるでしょう。

卵子凍結の流れ

卵子凍結の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 初診・検査
    感染症検査やホルモン検査などを行います。
  2. 排卵誘発
    自然周期や内服薬、注射などにより排卵を促します。
  3. 採卵
    経膣超音波の機器と採卵針を使用し、卵胞液とともに卵子を採取します。
  4. 凍結保存
    採取した卵子から成熟した卵子のみを『ガラス化法』により凍結保存します。

採卵時は痛みを和らげるために麻酔を使用する場合がありますが、医療機関によって異なります。

卵子凍結について悩んでいることや不明点がある場合は、カウンセリングの際に相談してみましょう。

卵子凍結がおすすめの方

卵子凍結は以下のような方におすすめです。

  • 今でなくても将来的に妊娠・出産を考えている
  • 少しでも若い卵子を残しておきたい
  • 将来のパートナーのためにできることをしておきたい

卵子凍結は妊娠を保証するものではありませんが、将来の妊娠の可能性を高める手段として有効です。

「今すぐというわけではないけれど、将来子どもを産みたい」と考えている方は、ぜひ卵子凍結を検討してみてください。

卵子凍結をする4つの理由

医師から卵子凍結についての説明を受ける患者さんの画像

卵子凍結をする理由は大きく4つ挙げられます。

  • 加齢により卵子の数が減少するため
  • 加齢により卵子が老化するため
  • 病気の治療により妊娠が難しくなる恐れがあるため
  • ライフプランを立てやすくなるため

ここでは上記4つの理由についてそれぞれ解説します。

加齢により卵子の数が減少するため

卵子は加齢によって数が減少するため、将来妊娠を考えているのであれば卵子凍結により卵子を保存しておくことが有効です。

卵子の数は胎生5か月ごろに約700万個でピークを迎え、それ以降は新たに作られることはなく減少していく一方となります。

出生時には約200万個、思春期ごろには約30万個、20代には約10万個、30代には約2〜3万個といったように加齢に伴って減少していきます。

卵子の数が減少することで妊娠率も低下するため、将来妊娠を考えている場合は卵子凍結で備えをしておくと良いでしょう。

加齢により卵子が老化するため

加齢に伴って妊娠率が低下する理由の一つが、卵子の老化です。

細胞内のエネルギー調節を行う重要な役割を持つ『ミトコンドリア』が、加齢とともに機能が低下することが卵子の老化と関係していると考えられています。

また加齢とともに卵子の染色体異常が増加することも明らかになっています。

染色体異常には正常な染色体の数と異なる『数的異常』と染色体の構造の一部が変化している『構造異常』の2つがあり、以下のような疾患を発症する可能性があります。

  • 数的異常:ダウン症候群、パトウ症候群、エドワーズ症候群など
  • 構造異常:酵素を作りにくいまたは作ることができないなど

さらに染色体異常が起こった受精卵は流産の可能性が高まるため、これも加齢に伴う流産率の上昇に関わっていると考えられます。

卵子が老化するメカニズムは未だはっきりと分かっていませんが、加齢の他にも以下のような原因が影響を与えている可能性があるでしょう。

  • 不規則な食事
  • 睡眠不足
  • 精神的ストレス
  • やせすぎまたは肥満
  • 運動不足
  • 喫煙

病気の治療により妊娠が難しくなる恐れがあるため

がんや自己免疫疾患などの病気にかかると、放射線療法や化学療法などの病気の治療によって妊娠が難しくなる恐れがあります。

卵子凍結には『医学的適応』と『社会的適応』の2つがあり、病気の治療によって妊娠が難しくなる可能性がある人を対象に行うものは医学的適応に該当します。

卵子凍結をしておけば、病気の治療による不妊リスクを減らし、治療が終わった後の妊娠に備えることが可能です。

ライフプランを立てやすくなるため

卵子凍結をすることでライフプランを立てやすくなる利点もあります。

20〜30代はキャリア形成と妊娠・出産に適した時期といえますが、仕事と妊娠・出産どちらを優先すべきか悩む方も少なくないでしょう。

卵子は加齢とともに数や質が低下するため、時期が遅くなるほど妊娠が難しくなっていきます。

しかし卵子凍結をすることで、卵子の老化による不妊リスクを軽減しつつ、家族や仕事を優先したライフプランを立てやすくなるのです。

卵子凍結のデメリット

英語で「デメリット」と記載された画像

卵子凍結のデメリットは以下の5つが挙げられます。

  • 卵子凍結は妊娠を保証するものではない
  • 卵子凍結は年齢制限がある
  • 保険が適用されないため全額自己負担
  • 保管時のリスクがある
  • 副作用のリスクがある

ここでは上記5つについてそれぞれ解説します。

卵子凍結は妊娠を保証するものではない

卵子凍結は妊娠を保証するものではありません。

卵子採取時の年齢での妊娠率は期待できますが、卵子凍結したからといって確実に妊娠できるわけではない点は理解しておきましょう。

あくまでも不妊リスクを軽減し、将来の妊娠の可能性を高めるための方法です。

卵子凍結は年齢制限がある

卵子凍結には年齢制限があり、何歳でもできるわけではありません。

一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会のガイドラインには以下のような記載があります。

凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない。

引用元:社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン

上記はあくまでもガイドラインのため必ず守らなくてはいけないものではありませんが、多くの医療機関が上記のガイドラインに基づいて年齢制限を設けています。

また上記の年齢でなくても、卵子採取時の年齢や凍結卵子の使用時の年齢に制限を設けている医療機関がほとんどです。

以下の記事では40代での妊娠が困難といわれる理由について解説しているため、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

40代での妊娠が困難といわれる理由は?受けるべき不妊治療の検査内容を紹介

保険が適用されないため全額自己負担

卵子凍結には保険が適用されないため、全額自己負担となります。

自由診療となるため医療機関によって費用は異なりますが、三軒茶屋ウィメンズクリニックの料金は以下の通りです。

各種検査(感染症検査、ホルモン検査等含む)約44,000円
採卵までの排卵誘発費用(内服薬、注射薬、経膣超音波検査等含む)約33,000円
採卵費用(採卵個数は問わず)約220,000円
卵子凍結約22,000円
凍結延長費用(1年ごと)卵子1個ごとに22,000円

当院では採卵費用は採卵個数関係なく約220,000円としていますが、医療機関によっては個数ごとに料金が設定されている場合もあります。

凍結期間によって料金が変動する医療機関もあるため、各医療機関の公式ホームページで確認してみてください。

保管時のリスクがある

卵子凍結は保管時のリスクがあります。

例えば保管期間中に保管施設が地震や火事、津波などの自然災害に遭うリスクは0とは限りません。

また人的ミスや停電などによって低温が保たれず、卵子が融解してしまうリスクもあります。

このような保管中のリスクがあることは理解したうえで、卵子凍結を検討する必要があるでしょう。

副作用のリスクがある

卵子凍結のための採卵時には、副作用のリスクがあります。

副作用として多いのが、卵子を採取するために使われる排卵誘発剤による『卵巣過剰刺激症候群(OHSS)』の発症です。

排卵誘発剤によって過剰に刺激されることで卵巣が膨れ上がり、お腹や胸に水が溜まる症状で、重症化すると血栓症を引き起こす恐れもあります。

またそのほかにも、出血や感染症、麻酔による副作用(吐き気や嘔吐、血圧低下など)のリスクもあります。

事前にリスクについてしっかり説明を受けた上で検討することが大切です。

まとめ

卵子凍結をする主な理由は、加齢による卵子の数の減少や老化、病気による不妊リスクの軽減、ライフプランを立てやすくするためなどが挙げられます。

卵子凍結は妊娠を保証するものではありませんが、将来の不妊リスクを軽減できる方法です。

いずれ子どもが欲しいと考えている方は、将来のための備えとして卵子凍結を検討してみてはいかがでしょうか。

三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、日本生殖医学会のガイドラインに基づいた卵子凍結を行っています。

患者さん一人ひとりの気持ちに寄り添った誠実な診療を提供しているため、卵子凍結をすべきか悩んでいる方はぜひ一度当院までご相談ください。

#卵子凍結 #凍結卵子 #不妊治療

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