不妊治療は何歳まで続けるべき?年齢による影響をわかりやすく解説
不妊治療において、「年齢」は極めて重要なファクターとなります。
2021年の人口動態統計(概数)で、第1子出生時の母親の平均年齢は30.9歳に上昇し、過去最高となりました。
現代では、晩婚化とともに出産年齢も上昇しており、子どもを望む多くの人々が、心の中の希望と、現実の生物学的なハードルの間で苦悩しています。
そこで本記事では、不妊治療を受ける年齢層について解説します。
年齢による不妊治療の影響を気にしている方や、不妊治療を継続するかどうか迷っている方々にとって、本記事が有益であることを願っています。
不妊治療をやめる年齢の目安は40代半ば
最初に述べたように、不妊治療における年齢の影響は決して小さくありません。
加齢に伴って妊娠確率は低下していくため、40代に入ると1回の性交での自然妊娠率は1〜5%、1回の胚移植でも15%以下というデータが示されています。
また、40代での妊娠は、特に41〜42歳に集中していることも報告されています。
さらに、妊娠確率の低さだけでなく、母体や胎児への負担やリスクも考慮すべきであり、45歳を超えると妊娠を諦めることも選択肢に入ることがあるでしょう。
妊娠適齢期とは
妊娠適齢期とは、女性が妊娠・出産に適した年齢のことを指します。
女性の体は加齢に伴って妊娠に必要な卵巣や子宮、ホルモン分泌などの機能が低下していくため、妊娠適齢期は限られています。
そのため、一般的には、20代前半から30代前半が妊娠適齢期とされています。
特に、20代前半が妊娠する確率が最も高い時期であり、25歳以下での出産を「若年出産」と呼びます。
一方、35歳以降は妊娠確率が低下し、流産や染色体異常のリスクも高くなってきます。
年齢別でみる妊娠と流産の確率
妊娠と流産の確率は、年齢によって大きく影響を受けます。以下に、年齢別の妊娠と流産の確率の一般的なデータを示します。
自然妊娠の確率
健康的な男女が排卵日付近に性交渉を行った場合、1周期(1回の月経周期)あたりの自然妊娠確率は20〜30%といわれています。
つまり、単純に考えると4〜5周期で1回妊娠することになります。
30代前半までは25〜30%となりますが、35歳を超えると確率が下がりはじめ、40代となるとさらに下降します。
年齢 | 1周期あたりの妊娠率 | 1年間あたりの妊娠率 |
20代 | 約25〜30% | 約78〜86% |
30〜34歳 | 約25〜30% | 約63% |
35〜39歳 | 約18% | 約52% |
40〜44歳 | 約5% | 約36% |
45歳 | 約1% | 約5% |
不妊治療をした場合の妊娠の確率
日本産婦人科学会が発表したデータによると、不妊治療を行った場合でも、年齢が上がるほど妊娠率は下がっていきます。
年齢 | 不妊治療を行った場合の妊娠率 |
20代 | 約25〜30% |
30〜34歳 | 約25〜30% |
35〜39歳 | 約18〜26% |
40〜44歳 | 約5〜16% |
45歳 | 約4% |
自然流産の確率
年齢を重ねると妊娠確率が低下するだけでなく、流産のリスクも高まってしまいます。
厚生労働省が発表したデータをもとに表を作成しましたが、もちろん個人差がありますので、以下はあくまでも目安にしてください。
年齢 | 自然流産率 |
20代 | 〜20%以下 |
30〜34歳 | 約10〜15% |
35〜39歳 | 約20〜30% |
40歳以上 | 約30%〜 |
加齢によって妊娠確率が下がる3つの理由
加齢とともに妊孕性(にんようせい:妊娠する力)が下がる主な原因には、以下の3つがあります。
女性ホルモンの減少
女性ホルモンには、卵巣から放出されるエストロゲンやプロゲステロンなどがあります。
これらのホルモンは、卵巣の機能や子宮内膜の厚みなど、妊娠に必要な機能を調整する役割を担っています。
女性ホルモンが減少すると、卵巣機能が低下し、卵巣から放出される卵子の数が減ります。
また、子宮内膜も薄くなり、受精卵が着床しにくくなるため、妊娠確率が低下することが考えられます。
特に閉経に向け更年期に入ると、卵巣機能が低下するため、妊娠することが難しくなります。
卵子の老化
卵子の老化とは、女性が年を取るにつれて卵子の品質が低下する現象です。
女性の卵巣内にある原始卵胞はすべて出生前に作られており、それらの卵胞のうち1つが排卵されることで卵子が作られます。
しかし、この卵子は一度作られると再生することはできず、年齢とともに老化が進行します。
生まれる前には約700万個あった卵胞細胞は、出生時には約200万個、初潮の始まる思春期には約20万個にまで減少し、その後は、1か月に約500個ずつ減少していくと言われています。
卵子の老化によって、染色体異常のリスクが増加し、妊娠や出産に必要な機能が低下します。
特に、35歳を過ぎると卵子の品質が急速に低下するとされており、40歳を超えるとそのリスクがさらに高くなります。
このため、高齢出産には染色体異常を持つ胎児のリスクが高くなることがあります。
母体の既往症のリスクの増加
年齢を重ねるにつれ、高血圧、糖尿病、肥満、子宮筋腫などのリスクが増加します。
これらの既往症がある場合、不妊につながったり、妊娠の継続が難しくなったりする場合があります。
また、特に妊娠中に糖尿病や高血圧を発症した場合は、母体や胎児に深刻な影響を及ぼすことがあるため、適切な管理が必要とされます。
保険適用になる不妊治療の年齢と回数制限
不妊治療には、年齢や治療回数に関する保険適用の制限があります。
一般的に、43歳以下の女性であれば保険適用の対象となりますが、43歳を超えるとすべての治療が保険の対象外となります。
年齢制限 | 回数制限 | |
治療開始時において 女性の年齢が 43歳未満であること | 初めての治療開始時点の 女性の年齢 | 回数の上限 |
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごとに) | |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごとに) |
妊娠確率をあげる方法
年齢を理由に妊娠を諦めたくない場合、妊娠確率をあげるために以下のことが役立つかもしれません。
健康なライフスタイルを維持する
健康的な食生活、運動、禁煙、適度なアルコール摂取など、健康的なライフスタイルは妊娠確率を高めるのに役立ちます。
睡眠をしっかりとる
睡眠不足は、ホルモンバランスを乱し、妊娠確率を低下させることがあります。できるだけ毎晩同じ時間に寝て、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
ストレスを軽減する
ストレスはホルモンバランスを乱し、妊娠確率を低下させることがあります。
ストレスを軽減するためには、ストレッチ、ヨガ、マインドフルネス、呼吸法、趣味など、自分に合った方法でリラックスすることが大切です。
早めにステップアップする
不妊治療には、人工授精、体外受精、顕微授精などの種類があります。
どの医療を選択するのかによって期待できる妊娠率が異なりますので、専門医と相談し、適切な方法を選択することで妊娠確率を高めることができる場合があります。
時間的なリミットが迫っている場合は、早めに治療方法をステップアップしましょう。
卵子を凍結保存しておく
−196℃という超低温の液体窒素の中で、卵子を凍結し、保管しておくことができます。
これにより、今はまだ妊娠を望んでいない人も、卵子を長期間保存しておくことができます。
費用はかかりますが、状態のよい卵子を保存しておくというのも1つの方法です。
まとめ
年齢を理由に子どもを授かりたいという思いを手放すことは、とても難しいことです。
ただ、不妊治療を終了した先に新たな人生の楽しみが待っていることもありますし、治療のストレスがなくなったら自然妊娠したという話も聞いたことがあります。
また、現代の生殖医療の進歩により、将来の妊娠に備えて早いうちに卵子を凍結保存をしておくこともできます。
自身のライフスタイルやパートナー、あるいは医師と相談しながら、後悔しない選択をすることが大切です。
「三軒茶屋ウィメンズクリニック」では、お一人おひとりの患者様とご家族のために、プライバシーを考慮した誠実な診療を行っております。
正確な検査と安全・確実な培養を行うために最新の機器を導入し、患者様のライフパートナーとして、よりよい治療方法をオーダーメイドにてご提供しております。
日本産婦人科学会に認定を受けた生殖補助医療実施機関であり、また、不妊治療助成金指定医療機関ですので、助成金・所轄申請をはじめとする手続き等の支援も行います。
卵子凍結(未受精卵子凍結)や漢方薬による治療も提供しておりますので、年齢で不妊治療を諦めたくないとお悩みの方は、ぜひ、三軒茶屋ウィメンズクリニックへご相談ください。
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