卵子凍結は何歳まで?年齢制限を超えて行うリスクについても解説
卵子凍結は若いころの卵子を凍結保存しておける方法です。
しかし何歳でも卵子凍結ができるわけではなく、一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会が発表している『社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン』に推奨年齢が記載されています。
この推奨年齢は必ず守らなくてはいけないものではないため、この年齢を超えて卵子凍結を行うことも可能ですがリスクが伴うため注意が必要です。
この記事では卵子凍結の年齢について詳しく解説します。
年齢制限を超えて卵子凍結を行うリスクもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
卵子凍結とは
卵子凍結は、卵巣から卵子を採取して冷凍保存することです。
卵子を冷凍保存しておくことで、将来の妊娠・出産に対する備えができます。
卵子凍結を行うメリット
卵子凍結を行うメリットは主に3つ挙げられます。
- 妊娠・出産の時期をコントロールできる
- 加齢に伴い減少する卵子を保存しておける
- 質の良い卵子を保存しておける
卵子は加齢に伴い数が減少し、質も低下していきます。
そのため自然妊娠の場合は加齢に伴って妊娠率も低下していきますが、例えば30歳のときに凍結した卵子を使用して40歳に妊娠する場合なら、30歳のときの妊娠率の維持が期待できるのです。
妊娠率を高めるのは身体的・精神的負担を抑えることにもつながるため、将来的に妊娠・出産を考えているならなるべく若い頃に卵子凍結をすることが推奨されます。
卵子凍結がおすすめの方
卵子凍結は以下のような方におすすめです。
- 将来妊娠・出産を考えている
- 少しでも若い卵子を残して妊娠率を高めたい
- もしもの病気に備えて卵子を残しておきたい
卵子凍結によって妊娠率の高い若い卵子を保存しておけるため、気持ち的にも安心できます。
「妊娠や出産を考えてはいるけどパートナーと相談してタイミングを検討したい」という場合は、卵子凍結をして準備を整えておくのがおすすめです。
卵子凍結の年齢制限は採卵と使用時で異なる
卵子凍結の推奨年齢は採卵と使用時で異なります。
具体的には採卵の推奨年齢は40歳未満、凍結保存した卵子の使用時の推奨年齢は45歳未満です。
これは一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会が発表している『社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン』に記載の内容で、これ以上の年齢での対応は推奨できないとされています。
基本的には上記のガイドラインに沿って年齢制限が設けられている医療機関が多いです。
採卵の年齢制限は40歳未満
ガイドラインに基づく採卵の年齢制限は40歳未満で、39歳までなら採卵可能な医療機関が多いです。
このガイドラインはあくまでも一つの目安とするもののため、40歳以上でも採卵可能な医療機関も中にはあります。
ただし、40歳を超えると卵子の質や出産率の低下、流産リスクの上昇などがあるため、慎重に検討しなくてはいけません。
使用時の年齢制限は45歳未満
ガイドラインに基づく凍結卵子を使用した妊娠の年齢制限は45歳未満で、つまり44歳までなら凍結卵子の使用が可能です。
こちらも医療機関によって対応が異なりますが、ガイドラインに沿って制限を設けているところが多いです。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでも採卵の年齢制限は40歳未満、凍結卵子の使用時の年齢制限及び保管は45歳未満としています。
医療機関によって年齢制限や使用・保管期限は異なる
多くの医療機関はガイドラインに沿って年齢制限・使用や保管の期限を設けています。
しかしこれはあくまでも目安とするもののため、医療機関によっては独自に卵子凍結の年齢制限・保管期限を設けている場合もあります。
卵子凍結をする際は、必ず医療機関の公式ホームページまたはカウンセリングにて年齢制限を確認しましょう。
不妊治療と年齢については以下の記事でも詳しく解説しています。
→不妊治療は何歳まで続けるべき?年齢による影響をわかりやすく解説
卵子凍結や凍結卵子による妊娠に年齢制限がある理由
卵子凍結や凍結卵子による妊娠に年齢制限がある理由は主に2つ挙げられます。
- 卵子は加齢とともに質が低下するため
- 妊娠合併症のリスクがあるため
ここでは上記2つの理由についてそれぞれ解説します。
卵子は加齢とともに質が低下するため
卵子は加齢とともに質が低下し、妊娠率の低下につながります。
卵子の元となる卵母細胞は胎生5か月頃に約700万個ほどでピークを迎え、それ以上は増えることなく減少する一方となります。
出生時には約200万個、思春期頃には30万個、20歳頃には12万個、30歳頃には5万個、40歳には5000個まで減少するのです。
新しい卵子が作られないということは元からある卵子は加齢に伴って老化するのみとなり、染色体異常が増加することも分かっています。
染色体異常は正常な染色体の数よりも増えたり減ったりする『数的異常』と、染色体の構造に一部異常が生じる『構造異常』の2種類があり、母体や胎児に以下のような影響が及ぶ可能性があるため注意が必要です。
染色体異常がある場合、流産、子宮内胎児死亡などのリスクがあります。
また、パトウ症候群(13トリソミー)、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)といった疾患が引き起こされる可能性もあります。
卵子の質が低下するメカニズムはハッキリと明らかにされているわけではありませんが、以下のような生活習慣も卵子の質の低下に影響しているのではないかと考えられています。
- 不規則な食事
- 睡眠不足
- 痩せすぎや肥満
- 精神的ストレス
- 運動不足
- 喫煙
卵子の質の低下については以下の記事でも解説しているため、ぜひこちらも合わせて参考にしてみてください。
妊娠合併症のリスクがあるため
加齢に伴って妊娠合併症のリスクが高まります。妊娠合併症には以下のようなものが挙げられます。
病名 | 症状 |
妊娠糖尿病 | 妊娠中に生じる糖代謝異常 ・妊娠高血圧症候群 ・羊水量の異常 ・網膜症や腎症の悪化など |
妊娠高血圧症候群 | 妊娠時に生じる高血圧 ・高血圧 ・蛋白尿 ・腎機能障害や肝機能障害などの合併症 |
前置胎盤 | 胎盤が内子宮口を覆ってしまう状態で、帝王切開での分娩が必要になる 妊娠中・分娩時も大量出血のリスクが高く、命に関わる |
切迫早産 | 早産の一歩手前の状態 子宮収縮が頻繁に起こり、破水による陣痛の発生や細菌の感染リスクなどがある |
常位胎盤早期剝離 | 胎盤が子宮から剥がれてしまう状態で、赤ちゃんに届く酸素が不足し、障害が残ったり死亡したりする場合がある |
卵子凍結は将来の妊娠・出産のために若い卵子を保存しておける方法ですが、高齢出産の問題をすべて解決できるわけではありません。
卵子凍結の年齢ごとの妊娠率
凍結卵子を使用した場合の、卵子1個あたりの年齢ごとの妊娠率は以下の通りです。
年齢 | 凍結卵子を使用した妊娠率 |
30歳以下 | 35%前後 |
31~34歳 | 30%前後 |
35~37歳 | 25%前後 |
38~39歳 | 20%前後 |
40歳以上 | 15%以下 |
上記は卵子1個当たりの妊娠率のため、より確率を高めるためには凍結する卵子の数を増やす必要があります。
採卵した卵子のうち妊娠可能な状態まで育つのは2〜3割程度のため、年齢にもよりますが少なくとも10個、できれば20〜30個は卵子凍結するといいでしょう。
年齢制限を超えて卵子凍結を行う注意点
『社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン』の年齢制限を超えて卵子凍結を行う注意点として、以下が挙げられます。
- 妊娠できる確率が低くなる
- 妊娠合併症のリスクが高くなる
- 流産率が高くなる
ここでは上記3つについてそれぞれ解説します。
妊娠できる確率が低くなる
凍結卵子を使用した年齢別の妊娠率を見てわかる通り、年齢が高くなるほど妊娠率が低下します。
30歳以下では35%前後ですが、40歳以上になると15%以下まで妊娠率が低下するのです。
このことから、40歳以上で卵子凍結を行うのは推奨されません。
妊娠合併症のリスクが高くなる
高齢になるほど妊娠合併症のリスクが高まります。
前置胎盤、常位胎盤早期剝離、妊娠高血圧症候群は加齢とともに発症リスクが上昇し、特に妊娠高血圧症候群は40歳以上で発症率が急激に増加することが明らかになっています。
また妊娠高血圧症候群と前置胎盤は20〜34歳と40歳以上で発症リスクに2倍以上の差があり、40歳以上で妊娠するリスクが高いことは明らかです。
妊娠・出産に伴う妊娠合併症のリスクを低減するためには、ガイドラインに記載の年齢(採卵時は40歳未満、凍結卵子を使用した妊娠は45歳未満)を守って卵子凍結を行うことが推奨されます。
流産率が高くなる
加齢に伴い流産率が高くなるため、高齢での卵子凍結や凍結卵子を使用した妊娠は推奨されません。
流産の頻度は平均15%程度ですが、年齢とともに流産率は増加し、40歳以上は妊娠の約半数が流産というデータもあります。(参考:2020年体外受精・胚移植等の臨床実施成績)
また流産にならなくとも妊娠合併症のリスクが高く、母子ともに体に悪影響が出る可能性が高い点にも注意が必要です。
まとめ
一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会の『社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン』には、卵子凍結の採卵の推奨年齢は40歳未満、凍結卵子の使用時の推奨年齢は45歳未満と記載されています。
あくまでも目安となるガイドラインのため、クリニックによってはこの年齢制限を超えて卵子凍結を行っているところもあります。
しかし年齢を重ねるほど妊娠率の低下や妊娠合併症の発症確率の上昇、流産率の上昇などのリスクは上昇します。
こうしたリスクをできる限り抑えるためには、ガイドラインに記載の推奨年齢を守ってなるべく早めに卵子凍結を行うのがおすすめです。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、ガイドラインに基づいた卵子凍結を行っています。
卵子凍結に関してお悩みの方は、ぜひ一度当院まで気軽にご相談ください。
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