卵巣刺激法「PPOS」
新しい卵巣刺激法「PPOS(Progestin-primed Ovarian Stimulation)」をご紹介したいと思います。
卵巣刺激法として、これまでお話してきた「ロング法」「ショート法」「アンタゴニスト法」「低刺激法」が一般的によく使用されていましたが、現在PPOSという新しい卵巣刺激法が広がりつつあります。特に重度の多嚢胞性卵巣(PCO)で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い人には第一選択となります。
PPOSとは卵巣刺激の際に黄体ホルモン剤を併用する方法です。黄体ホルモンは排卵後の黄体から分泌されるホルモンであり、子宮内膜の着床環境を調整する妊娠成立に必要不可欠なホルモンと同時に、排卵抑制効果があります。当院ではデュファストン錠を使用しています。
ご存知の通り、卵巣刺激中は排卵に注意する必要があります。「ロング法」「ショート法」では排卵抑制作用のあるアゴニスト製剤の点鼻薬を使用していますので、基本的には排卵しません。「アンタゴニスト法」「低刺激法」では卵胞がある程度発育するとアンタゴニスト製剤を追加する必要があります。しかし、アンタゴニスト製剤を長期投与すると胚質低下の一因にもなるので、開始時期を見極めることは良好な胚を得るために重要であり、これが患者様の来院回数が増える一因にもなっています。
PPOSはアンタゴニスト法や低刺激法に黄体ホルモン剤を併用することでアンタゴニスト製剤を投与する必要がなくなります。その結果、アンタゴニスト製剤の長期投与による胚質低下を防ぐだけでなく、来院回数の減少、コスト削減にもなります。
方法としては、月経開始2~3日目からFSH/HMGを連日注射し、卵胞を育てます。
一般的に注射開始日からデュファストン錠を内服します。
次にメリット・デメリットを説明していきます。
《メリット》
- ・治療開始前の準備期間が必須でないため、治療期間も短い
- ・アンタゴニスト製剤に比べてデュファストン錠は安価なため費用が抑えられる
- ・OHSSのリスクがある場合は卵子成熟をHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬で行うことができる
- ・採卵後にアンタゴニストを使用すればE2を抑制できOHSSを予防できる
- ・通院スケジュールがアンタゴニスト法と比較して組みやすい
《デメリット》
- ・デュファストン錠を使用するため、高温期のホルモン状態になってしまい新鮮胚移植が
できない - ・アンタゴニスト法より1~2日刺激日数が長くなる傾向がある
料金につきましては使う薬剤量にもよりますので、来院時にお尋ねください。
初回は年齢やホルモン値などを参考に、最も合いそうな方法を選択しますが、実際にやってみなければわからない部分も多く事前に予想した反応にならないこともあります。
院長 保坂 猛
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